速さもレスポンスもある
フェラーリが3.9リッターのV8ツインターボユニットを488GTBに搭載するに当たり、まず重視したのが言うまでもなく動力性能の改善だ。その加速力は0-400m:10.45秒、0-1000m:18.7秒、0-100km/h:3.0秒と、とんでもない数値が並ぶ。ちょっと前までフェラーリV8史上最強というタイトルをほしいままにしていた458スペチアーレをしのぐ俊足ぶりである。そればかりかフィオラーノでのラップタイムは1分23秒00と、あの「エンツォ・フェラーリ」の記録である1分24秒9を打ち破っている。
フェラーリが重視したのはもちろん速さだけではない。前述したとおりハイパワーなターボユニットが苦手とする俊敏なエンジンレスポンスの獲得も重要なテーマだった。フェラーリが傑出したドライビングマシンであり続けるためには、これは避けられない課題だ。具体的には、ターボチャージャーのツインスクロール化とTiAl(チタンアルミ)合金タービンホイールならびにボールベアリングの採用、そして排気系の見直しなど比較的オーソドックスな手法がとられている。ちなみにターボユニットはIHI製である。
実際、スロットルペダルの操作に対するレスポンスは素晴らしい。加えて、3000rpmで早くも760Nm(77.5kgm)のピークに達し、そこから6000rpm台の半ばまで700Nm(71.4kgm)以上のトルクが維持されるおかげで、幅広い領域で分厚いトルクの“ツキ”が期待できる。ドライバビリティーの良さは特筆に値する。例えばフィオラーノには2速で回り込むヘアピンコーナーがあるが、仮にそこに3速のまま入ったとしても、それなりに立ち上がれてしまうだけの柔軟性がある。
フィオラーノのメインストレートに入り、スロットルを全開にすると、リミットの8000rpmまでターボユニットらしからぬシャープさで吹け上がった。シフトアップとダウンの双方向で変速スピードが改善されたF1デュアルクラッチ・トランスミッションのテンポのよさも相まって、あれよあれよという間にペースが増していく。高速域でもグイグイと容赦なくスピードがのっていき、気付くとすでに200km/hを超えていたという感じだ。あえて指摘するなら、鋭く甲高いエンジン音を響かせる自然吸気ユニットに比べると、ドラマ性という点が欠けるかもしれない。しかしまあ、物足りなさを感じるところがあるとすれば、それくらいのものである。
サーキットでこの3.9リッターV8ツインターボユニットを高らかに歌わせていると、スロットルオフとともにキャビンの背後からプシューッというブローオフバルブの息づかいらしきものが聞こえてくるのだが、そういえばこういう音は「F40」でもしていたなと、ふと思い出した。
今回の試乗会は、フィオラーノ・サーキットのほか、ワインディングロードやアウトストラーダを含め、マラネロの周辺をぐるっと回る一般道も設定されていた。
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試乗車には「458スペチアーレ」のものに似た、スポーティーな形状のレザーシートが装着されていた。
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レッドゾーンは8000rpmから。目盛りは1万rpmまで振られている。
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タコメーター左脇のインフォメーションディスプレイにはブースト計など、ターボユニットならではの情報も表示される。
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