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ランドローバー・ディスカバリーHSEラグジュアリー(ガソリン)(4WD/8AT)

真の高級SUVとは? 2017.08.18 試乗記 フルモデルチェンジを受けて、多用途性や走破性に一段と磨きがかけられた「ランドローバー・ディスカバリー」。世にSUVは多いが、“真の高級SUV”とは何かを教えてくれる存在はそれほど多くない。3リッターV6ガソリンエンジン搭載モデルに試乗した。

立派になった

ディスカバリーは「レンジローバー」の弟分として1989年に登場した。仕様やサイズの違いはあるにせよ、5世代目となってもうほとんどレンジローバーと同じような内容を備えるにいたり、どちらを選ぶかというところまでくれば、今やライバル関係ともいえる。

3列シートの「レンジローバー スポーツ」と比べると似通っている部分も多く、「イヴォーク」まで広げると価格的にもかぶっていたりする。「ディスコ3」あたりまでは造りの内容にもやや差があり、価格差もそれなりにあったが、今度のディスカバリーは最もベーシックな「HSE」モデルのガソリンで779万円と高価だし、見た目も立派だ。本格的にラフを攻めるならば「ディフェンダー」という選択肢もかつてはあったが、オンロードも高級セダンのように使えるコレがイイ。レンジローバーの「格」までは求めないし、もう少し若々しさも欲しいというユーザーには格好のモデルといえそうだ。

いざ走りだすと、絶対的には大きく重いから、初動の穏やかさは重量級のそれ。もっとも、動き出してしまえば3リッターV6+スーパーチャージャーで340psのパワーにもの言わせてぐいぐい加速するし、太いタイヤであっても接地荷重に不足はない。パワーステアリングの操舵力は軽いがタイヤグリップも確実、向かうところ敵なしの感もある。

今回はガソリン仕様の上級グレード「HSEラグジュアリー」に試乗。車両価格は881万円。
今回はガソリン仕様の上級グレード「HSEラグジュアリー」に試乗。車両価格は881万円。拡大
「ディスカバリー」の伝統のインパネデザインが、モダンに再解釈された。各部に本物のウッドやメタルが使用されている。
「ディスカバリー」の伝統のインパネデザインが、モダンに再解釈された。各部に本物のウッドやメタルが使用されている。拡大
340psと450Nmを生み出す3リッターV6スーパーチャージド・ガソリンユニット。
340psと450Nmを生み出す3リッターV6スーパーチャージド・ガソリンユニット。拡大
試乗車のボディーカラーは「サントリーニブラック」。オプションの21インチホイールを履いている。
試乗車のボディーカラーは「サントリーニブラック」。オプションの21インチホイールを履いている。拡大

低ミュー路との付き合い方に一日の長あり

だが自重が2.44tと重いだけに、低ミュー路での下り坂は苦手だ。上り坂なら無造作に駆け上がることができても、慣性のつく下り坂はそうもいかない。当然細心の注意は必要であるが、そんな部分も速度規制してくれるヒルディセント付きのブレーキは有効である。

ヒルディセントのお世話になる前にもうひとつ、滑りやすい路面や下り坂でもステアリング操作に専念できる、ATPC(オールテレイン・プログレス・コントロール・システム)も備える。一定速度で低速走行するこれも、下り坂で速度が上がりすぎないように抑制してくれる。このスイッチをいれておけば通常はヒルディセントの領域まで使わずとも、少し急な下り坂も安心して降りることができる。

低ミュー路といってもいろいろあって、平たんな路面で凍っていたり水でぬれていたりするような場合には、タイヤ踏面の面圧(単位面積当たりの荷重)が高く確保されていればほぼ安泰だが、それだけではなく広い面積で包み込むようなエンベロープ特性も効果がある。ザクザクの圧雪路や砂利道などはまた異なる。

と、その時々の状況でいろいろ変化がある路上において、ドライバーのテクニックだけで万全と慢心するのも結構だが、こうした電子制御デバイスの備えがあることはありがたい。意識して攻めるときにはなくてもいいかと思っても、突発的に訪れるものや気を緩めて流しているときだってあるから、いわば最後の砦(とりで)ともいえる安全装置はあるに越したことはない。普段から顔を出すような余計なお世話を感じさせないチューンは、ランドローバー社の低ミュー路に対する付き合い方の長い経験と歴史を感じさせる。

「HSEラグジュアリー」グレードにはウィンザーレザーのシートが装着される。
「HSEラグジュアリー」グレードにはウィンザーレザーのシートが装着される。拡大
トランスミッションは8段AT。ダイヤル型シフトセレクターの手前に、走行モードを切り替える「テレインレスポンス2オート」(オプション)のセレクターが設置されている。
トランスミッションは8段AT。ダイヤル型シフトセレクターの手前に、走行モードを切り替える「テレインレスポンス2オート」(オプション)のセレクターが設置されている。拡大
2列目シートにはスライドとリクライニングのほか、6:4の分割可倒機構が備わる。
2列目シートにはスライドとリクライニングのほか、6:4の分割可倒機構が備わる。拡大
オプションとして用意される3列目シート。「リモートインテリジェントシートフォールド」機能を使えば、タッチスクリーンのほか、スマートフォンのアプリを使ってシートが展開できる。
オプションとして用意される3列目シート。「リモートインテリジェントシートフォールド」機能を使えば、タッチスクリーンのほか、スマートフォンのアプリを使ってシートが展開できる。拡大

ガソリン仕様は軽快さが美点

エンジンはガソリンとディーゼルどちらも選べる。ディーゼルは騒音も小さく静粛な回り方をする。もちろん燃費もいい。もともと高価ゆえ、価格差は僅差(ディーゼルが20万円高)でしかない。たとえば日常的にボートを運ぶとか、けん引車として使うときなどは自重が重いほうが有利であるから、ディーゼルがお薦めだ。トルク感の違いは特に大きい。とにかく力持ちである。ディーゼルだけでもシリーズは成り立つと思う。また微妙な問題だが、燃料の軽油の臭気に弱い人が家族にいる場合にはお薦めしない。

その一方で、距離を乗らない人にはガソリン仕様をお薦めする。実際に乗り比べてみると、操縦性の点でガソリン仕様は軽快だ。身軽さはボディーがアルミでできていることの軽さを、より明確に享受できる。前モデルに対して外皮の重量が360kgも軽減されたことは、ジャケットを脱いでTシャツで動くような感覚がある。左右方向のGや加速/減速などの縦Gに対しても余計なボディーのイナーシャが少なく、スッと動いてスッと収まる挙動は気持ちのいいものだ。

さらに重心位置の高さ配分に影響するエンジン重量の違いはモーメントとして効くので、ヨー/ロール/ピッチ方向の挙動の遅れなど、数字から予想する以上に軽快な印象を強める。20kgといえども、高さが関係してくる重さはこんなに効くのだろうかと驚く。もともと2tを超す重量級ゆえ、20kgがどこにあろうがそれほどの違いはなさそうと思われるかもしれないが、乗ればその違いは明確。しかし実際に購入するユーザーは毎日乗り比べるわけではないから、それほど気にすることもなかろうかとも思う。でもリポートする側としてはより正確な印象として書いておきたい。ディスカバリーはそれほど繊細な感覚をもって作られているということか。

動力性能は0-100km/h加速が7.1秒で、最高速は215km/h(ヨーロッパ仕様の参考値)。
動力性能は0-100km/h加速が7.1秒で、最高速は215km/h(ヨーロッパ仕様の参考値)。拡大
メーターはオーソドックスな2眼式。
メーターはオーソドックスな2眼式。拡大
全モデルに電子制御エアサスペンションが標準で備わる。センターモニターで4WDドライトレインの状況をモニタリングが可能。
全モデルに電子制御エアサスペンションが標準で備わる。センターモニターで4WDドライトレインの状況をモニタリングが可能。拡大
試乗車のタイヤサイズは275/45R21(オプション)。
試乗車のタイヤサイズは275/45R21(オプション)。拡大

長く付き合えそう

以前、清里で行われた新型ディスカバリーのプレス試乗会では、スキー場のゲレンデを使って登坂降坂のコースが作られていた。ここではレンジローバーと乗り比べるチャンスもあったが、詳細に覚えているほどの差はなかった。WB(ホイールベース)も全長も僅差であり、基本構成は同じものかと思われる。7人乗れる室内スペースも同じように感じられるし、走破能力にも差は感じられない。あとは内外装デザインの違いとかそんなものだと思う。

また今時のスマホ普及を利して、シートの電動調整などをスマホで遠隔操作できる小技ももっている。途中で眠ってしまった子供などを乗せる際にはあらかじめセットできて便利。またエアサスペンションは車高を変えられるのも特徴で、乗り降りに際してフロアを低くして路面との距離を近くしたり、乗車人数によって変わる荷重に対応して適切なジオメトリーをサスペンションアームに与え、乗り心地や操縦安定性に最適な動きをさせたりすることも任意に可能だ。そんな目立たない部分での親切設計も高級車の証しであろう。直感的にはディスカバリーの方が微少に小ぶりで取り回しはラク、価格も少し安いとなればディスカバリーはお買い得な車だなーと思う。

ヒルディセントにしてもエアサスペンションにしても、こうした技術をSUVの世界に最初に持ち込んだのはランドローバー社である。一時の限られた効用だけでなく、長期にわたる使用でこそ重宝するチャンスもあるわけで、メンテナンスに要する費用もそれなりに要求されるけれども、そうしたことを維持する費用もまた高級車ゆえ高額である。頻繁に売り買いされて中古車市場をにぎわすような車もあるが、高価格を維持するのも高級SUVの証しであろう。しかし、長期にわたって愛される、いわば地味な長期所有を可能にする車こそ真の高級SUVであり、そんな車を作ってきたのがランドローバーなのである。

(文=笹目二朗/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)

サラウンド(360度ビュー)カメラシステムは標準装備。ACCや車線逸脱警告、ブラインドスポットアシストなどの先進運転支援システムはオプションとして用意される。
サラウンド(360度ビュー)カメラシステムは標準装備。ACCや車線逸脱警告、ブラインドスポットアシストなどの先進運転支援システムはオプションとして用意される。拡大
「HSEラグジュアリー」では電動パノラミックルーフが標準で備わる。
「HSEラグジュアリー」では電動パノラミックルーフが標準で備わる。拡大
ラゲッジスペースの容量は7シート状態で258リッター。2列目と3列目を倒せば、最大で2406リッター(写真)まで拡大可能。
ラゲッジスペースの容量は7シート状態で258リッター。2列目と3列目を倒せば、最大で2406リッター(写真)まで拡大可能。拡大
標準で備わる「電動インナーテールゲート」。荷物の積み下ろしを楽にするだけでなく、荷物が多い時の固定具にもなる。
標準で備わる「電動インナーテールゲート」。荷物の積み下ろしを楽にするだけでなく、荷物が多い時の固定具にもなる。拡大
今回の試乗距離は約210km。燃費は6.8km/リッター(満タン法)となった。
今回の試乗距離は約210km。燃費は6.8km/リッター(満タン法)となった。拡大

テスト車のデータ

ランドローバー・ディスカバリーHSEラグジュアリー(ガソリン)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4970×2000×1895mm
ホイールベース:2925mm
車重:2440kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:340ps(250kW)/6500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/3500rpm
タイヤ:(前)275/45R21 110W XL/(後)275/45R21 110W XL(グッドイヤー・イーグルF1 SUV 4×4 M+S)
燃費:--km/リッター
価格:881万円/テスト車=1107万6000円
オプション装備:メタリックペイント<サントリーニブラック>(9万7000円)/InControlプロテクト(4万5000円)/4ゾーンエアコンディショナー(6万9000円)/電動調整可倒式自動防眩(ぼうげん)ドアミラー(4万7000円)/21インチ スタイル9002アロイホイール<9スポーク ダイヤモンドターンフィニッシュ>(28万円)/ステアリングホイールヒーター(3万8000円)/5+2シート(28万8000円)/シートヒーター&クーラー<フロント・2列目>およびシートヒーター<3列目>(27万3000円)/電動3列目シート<トランクルームからの電動操作>(4万5000円)/360度パークアシスト(5万8000円)/ヒーテッドフロントスクリーン<ヒーテッドウオッシャー付き>(3万2000円)/フロントスクリーン用ヒーテッドウオッシャー(2万4000円)/プライバシーガラス(7万5000円)/ルーフレール<シルバー>(4万7000円)/自動緊急ブレーキ(2万2000円)/レーンディパーチャーワーニング<車線逸脱警告機能>(2万2000円)/アドバンスド・パークアシスト<縦列駐車・出庫/直角駐車支援機能>(16万9000円)/テレインレスポンス2(14万8000円)/スモーカーズパック(8000円)/インテリジェントシートフォールド(7万8000円)/リアシートエンターテインメントシステム(31万円)/ドライブパック(3万4000円)/InControlコネクトプロパック(5万7000円)

テスト車の年式:2017年型
テスト車の走行距離:5534km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:212.0km
使用燃料:31.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.8km/リッター(満タン法)/7.8km/リッター(車載燃費計計測値)

ランドローバー・ディスカバリーHSEラグジュアリー(ガソリン)
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