ひとつ言わせていただくならば……
メルセデスらしくないと思うのは、サイドブレーキスイッチの場所とか作動要領が一般的ではない気がする点だ。その昔、メルセデスはパワーステアリングの時代になっても、大きな径のハンドルをそのまま使っていた。ベルトが切れたときのことを考え、油圧ポンプが作動しなくなり突然操舵力が重くなって、ハンドルを回せなくなったときを想定していたのだ。ちなみに現代のメルセデスは電動モーターによりアシストされる。
ブレーキが失陥したときの最後の頼みの綱はサイドブレーキである。今時の管理技術では壊れたり摩耗したり……ということは考えにくいが、何かの拍子にどこかでフロアを干渉させたりして、ブレーキパイプを損傷させて油圧を失うことは皆無とはいえない。そんなときには別系統でマニュアル操作できるサイドブレーキが頼りになる。
個人的な過去の経験を言えば、300万kmの走行距離の中でブレーキが失陥した事件は一度あった。それは新車の試乗車であったが、マスターシリンダーの中に切削時の切片が残っていたらしく、それが回数を重ねるうちにラバーブーツを切ってオイルが漏れてしまったのだった。スコーンと踏み代がなくなる感覚など思い出したくもないが、ま、ともかくその場はサイドブレーキで事なきを得て山を下ってきた。もちろんメルセデスではなく他国のメーカーだったがあえて名前は書かない。そんな経験などしないに越したことはないが、皆無と断言もできない。
最近のサイドブレーキスイッチは電気式になって、引くものと押すものがあり統一もされていないが、同じペダルを二度踏みして解除する方式に比べればマシといえる。しかしスイッチがどこにあるか一見してわからない場所にあるのも考え物だ。頻繁には使わないという人もいる。ATの普及でPに入れてしまえば一応車を停止させておくことが可能だ。また冬季はサイドブレーキを引いてはいけない、という地方もある。しかし老婆(爺)心で言わせてもらうならば、そんなことにも普段から留意しておくことが肝要だと思う。自分の車であれば知っていることでも、いつ他人が運転するかわからず、そんなときには一般性が問われる。
とはいえ、E350eは最近乗せてもらったメルセデス・ベンツの中でも秀逸なイイ仕上がりの車だと思う。
(文=笹目二朗/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
動力性能は0-100km/h加速が6.2秒で、最高速は250km/h(いずれも欧州仕様車の参考値)。
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プラグインハイブリッドシステムは、エンジンと電気モーターを併用する「HYBRID」、電気モーターのみで走行する「E-MODE」、バッテリーの充電レベルを維持する「E-SAVE」、走行しながらバッテリーを充電する「CHARGE」の全4モードから選べる。
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センターモニターでエネルギーフローを表示させたところ。リチウムイオンバッテリーの充電時間は、「CHARGE」モードでの走行で、満充電まで1時間以内とうたわれている。
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充電ポートは車体の右後ろにある。満充電までに必要な時間は、AC200V電源使用で約4時間以内とのことだ。
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今回の試乗距離は300kmあまり。燃費は満タン法で9.8km/リッターとなった。
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