JAIA合同試乗会の会場から、お手ごろ価格なのに楽しさ満点の「ルノー・トゥインゴGT」や「シトロエンC3」、北欧プロダクトの香りただよう「ボルボV40 D4」、イタリアの名門が放つ「アルファ・ロメオ・ジュリア」「マセラティ・ギブリ」の魅力をリポートする。

キビキビ? ドッシリ?
ルノー・トゥインゴGT EDC……239万円

RRでターボ、ルノー・スポールが専用チューニング。
思い返せば、先代の「メガーヌR.S.」はとびきりのホットハッチだったし、「ルーテシアR.S.」も街でもサーキットでもよしの万能車だった。新型「メガーヌGT」も懐の深い走りが味わえた。

ルノー・スポール謹製の末弟は、どんな走りを見せてくれるんだろう?

そんな期待に、パンパンに胸を膨らませて乗ると、……すこ~し肩透かしを食うのがトゥインゴGTである。

意外とフツー。つまり、走り始めてすぐに“さすがルノー・スポール!”と感じるような分かりやす~いクルマにはなっていないのだ。パワーアップしたといっても109psは驚くほどのものではないし、RRレイアウトならではのオーバーステアを抑えるためか、キビキビ感はかなり控えめ。また、前輪荷重が少ないせいもあって、ステアリングフィールもやや心もとない。

ボディーサイドにエアインテークの設けられたルックスは精悍(せいかん)だし、2本出しのエキゾーストパイプは勇ましい。オレンジ色も効いていて、コンパクトなサイズの割に存在感は抜群だ。今回、ルノー・スポールはスタイリング担当だったの? なんてふうにも思ったりして……。

ところが、ワインディングロードでちょっと飛ばすと印象は一変する。ペースが上がるに連れて、ルノー・スポールがどんどん出てくる。ここで言うルノー・スポールとは敏しょう性と安定性とのバランスだ。タイヤはヨコハマのエコタイヤ「ブルーアースA」。なのに、こんなに曲がる。こんなにトラクションがかかる。みたいな。

ヨコハマのハイグリップタイヤ「アドバン ネオバ」を履いた軽ミドシップ「ホンダS660」は、誰が乗っても切れば切っただけ曲がる、分かりやす~い味付けが売りだった。トゥインゴGTはその反対。ドライバーの操作以上に曲がりすぎないようスタビリティーを確保しつつ、ちょっとマニアックな運転の愉しさが味わえるクルマに仕上がっている。

最後に。MTとEDCなら、左足にも居場所があってタコメーターが無くても気にならないEDCにします。制御に不満はないし、ギアも1段多くて、加速にも燃費にも有利。できればオプションでも構わないので、シフトパドルは欲しい。

(文=Clubpyme こんどー/写真=田村 弥)

かわいい・かっこいい・楽しい
シトロエンC3シャイン……239万円

最近の軽自動車には、かわいい標準顔と、りりしいカスタム顔が用意されることが多い。シトロエンC3には、その両方の魅力が備わっている。ちょっとつり目気味のLEDデイタイムライト(ヘッドライトはその下の丸い方)がキリッとした迫力をアピールする一方で、ボディー全体はコロンと丸みを帯びたフォルムをしている。かっこよくてかわいい。

「C3は○○だ!」と例えてみようと、かっこよくてかわいいタレントを思い起こしてみたが、芸能事情にうとい筆者の頭には浮かばなかった。コロンとしていてかっこいいということで、力士に例えるなら遠藤!? ヨーロッパ車ということなら琴欧州(ブルガリア出身ですが)!?

インテリアもステキだ。例えばシート。グレーの濃淡で2トーンとしているが、ここに薄いイエローのアクセントステッチが入るだけで、まるでデザイン家具のようにオシャレになる。素材の話をすればただの布と糸なのだが、デザインへの力の入れ方が違う感じがするのである。

乗ってもまた良かった。1.2リッター直3ターボエンジンはお世辞抜きにパワフルで、発進加速も中間加速も何の不満もなかったどころか、素直に楽しかった。モータージャーナリストの河村康彦さんが「ディーゼルとガソリンユニットのいいとこ取り」と評しておられたが、非常に的確な表現だと思う。

これで価格が239万円。「スズキ・スイフトスポーツ」や「ルノー・トゥインゴGT」など、魅力的なライバルが数多く存在する価格帯ではあるが、かわいくて、かっこよくて、ドライブが楽しいC3は、誰にでもおすすめできる一台だ。

(文=Clubpyme 藤沢/写真=田村 弥)

「今しか見らんない光景だよ」
ボルボV40 D4 R-DESIGNチューンド・バイ・ポールスター……499万円

本稿をパカパカ執筆する記者に、隣席の藤沢青年が言った。「なんだってこのタイミングで、こんなクルマ選んだんです?」 やれやれ。このゴルフ乗りは何もわかっちゃいない。今回のJAIAで最も乗っておくべきクルマはこれだっつーのに。

なんでだって? 理由は腐ってキノコが生えるくらいあるわ。まずは新世代プラットフォーム「CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)」を使った「XC40」がすでにデビューしていて、現行型V40も引退が見えてきたこと。ボルボが次期型ディーゼルの開発に消極的で、ひょっとしたら現世代のユニットがボルボ最後のディーゼルになるかもしれないこと。そして同社の高性能車部門だったポールスターが、「電動のプレミアムカーを取り扱うサブブランド」に変身しつつあること。つまり「現行型V40のディーゼル、ポールスターのロムチューン添え」な同車は、まさに「今しか見らんない光景だよ」(芦奈野ひとしリスペクト)な一台なのだ。

で、実際に乗った感想は「やっぱり乗っておいてよかったナア」だった。
直噴ディーゼルターボならではのトルクレスポンスは実にキモチ良く、加速で胸がすく。エンジンの音や吹け上がりは、「まるでガソリンエンジン」とまではいわないまでも十分にスムーズで気に障るところがない。ちゃんとストローク感のあるサスペンションもいいカンジだ。もっとも、235/35R19というド偏平のタイヤがそれをぶち壊しにしているが(笑)、このクルマは現行V40随一のとんがりグレード。むしろそのくらいの引っ掛かりがないと普通過ぎるでしょう。

2年半前、V40 D4がデビューしたときにはシャシーに対するエンジンのオーバースペックっぷりに驚かされた。まだ見ぬ新型V40ではもうそんなことはないのだろうが、それが同時にちょいと寂しくもある。エンジンのパフォーマンス志向が陰りを見せる一方で、シャシーの進化はとどまることを知らない。V40 D4の走りはボルボだけでなく、Cセグメント全体でも「今しか見らんない光景」なのかもしれない。

(文=Clubpyme ほった/写真=田村 弥)

ベーシックではなくスタンダード
アルファ・ロメオ・ジュリア スーパー……543万円

ラインナップの頂点には、とびきり高性能な510psの「ジュリア クアドリフォリオ」が鎮座ましましている。そのせいで、他のジュリアが退屈そうに見えたとしても、それはもう、仕方のないことである。クオーレスポルティーバ(スポーツ心)が色濃く宿っていればいるほど、「らしい」「いいね」と言われるのが、アルファ・ロメオというブランドの、今の文脈なのだから。

だからこそ、実質上、ラインナップのベースを担う「ジュリア スーパー」に乗ってみたわけである。素性の良しあし、そして作り手の誠意みたいなものは、ベースグレードにこそ強くにじむと思うからだ。

エンジンは200psの2リッター直4で、車重は1590kg。そう聞いて、何となくかつての「ツインスパーク」を想像しながら走りだした。しかし、あれとは風合いがちょっと違っていた。エンジンを回し気味にして前のめりで走らせるのがツインスパークなら、こちらは今どきのターボエンジンらしく、2000rpmも回せば頼りがいのある実用トルクが、さらりと出てくる。しかも、思いのほか速い。

ロック・トゥ・ロックで2.4回転しか回らないステアリングは、あいかわらずキレッキレで、操舵に対して過敏なまでに反応する。調べたら、ギアレシオは11.8(!)とのことだった。クルマ全体を貫くテンポ感から外れた、突出した速さのギア比だが、まあ「らしい」といえば「らしい」。

そしてアルファ・ロメオらしいと思ったのが、素のイタリアンサルーンに共通する、軽いタッチの足まわりである。ドイツ車のようにアスファルトをつかむという印象ではなく、路面にどこかふわっと乗っかって、それでいてそう簡単にはブレイクしない、あの独特な感じがこのクルマにも生きていた。実は今回、この点にこそ、ああ、アルファだなあ、と感じ入った次第だ。

スーパーはベーシックなジュリアではない。これぞスタンダードなジュリアである。

(文=Clubpyme 竹下/写真=峰 昌宏)

白鳥のように優雅、そして獰猛
マセラティ・ギブリSグランスポーツ……1093万円

マセラティ・ギブリといえば、ブランドの中核をなす4ドアセダン。「クアトロポルテ」より一回りちいさいが、見た目は“グラマラス”。グリルから空気を吹き込んで、パンッと膨らませたように、ふくよかに張り出した面がなんとも優雅で美しい。

ギブリは2018年モデルから2種類のトリムオプションが設定され、「グランルッソ」と「グランスポーツ」という、外観やインテリア違いの2バージョンから選べるようになっている。試乗したのは、より精悍(せいかん)なデザインをまとった「グランスポーツ」だ。

パワーユニットには、最高出力430ps/最大トルク580Nmを発生する、3リッターV6ツインターボエンジンと8段ATを組み合わせる。
スタートスイッチを押すと「ドコドコドコギュイーン」という音が控えめに響いた。以前はもっと獰猛(どうもう)なサウンドが際立っていた記憶があるが、2018年モデルは、エンジン音や排気音が若干静かになっているのだろうか。想像以上に室内は静かで、薄味に感じる。

が、やっぱりその特徴はエンジンにあると思う。
湖面に浮かぶ白鳥にでもなったように、“スィーーーー”とフラットな姿勢を保ちつつも、エンジンはフェラーリの流れをくむだけあって、穏やかさと獰猛さを併せ持ち、アクセルを踏み込むと、ワルな感じにも豹変(ひょうへん)する。コレ、コレ。コレですよ。

以前、ビトゥルボ時代の「マセラティ430」を所有していたことがある。低く響く“ボボボボ”という排気音が好きだった。電装系は弱かったが、エンジンそのものは元気で、運転していて楽しかった。

私のマセラティに対するイメージはこの430がベースにある。だから、マセラティのエンジンにはこの先もずっと、そのパワーを音や振動で体感的に感じさせるものであってほしい。ガワだけマセラティで、無味乾燥なエンジンなんてつまらない。

(文=スーザン史子/写真=峰 昌宏)

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