三菱エクリプス クロス Gプラスパッケージ(4WD/CVT)
普通のことが普通にできる
2018.04.10
試乗記
三菱から満を持して登場した久々のニューモデル「エクリプス クロス」。同社の次世代製品群の旗手を担うコンパクトSUVは、ハイブリッドやディーゼルといった“飛び道具”はないものの、運転しやすく快適な、ちゃんとした乗用車に仕上げられていた。
方々で話題に上がる評判のよさ
某月某日。プレス試乗会の現場で会った某インポーター広報部のAさんは「あのクルマ、評判いいですよね」といった。いれかわりたちかわりやってきたモータージャーナリストその他の人たちが、そのへんのことを彼に話したのであろう。
「あのクルマ」とはもちろん今回のこのクルマのことで、それが「評判いい」。自動車プレス関係者がわざわざ「いいよ」というクルマ、実はそんなにはない(試乗記等ではそこそこかもっとホメているっぽくても)。なので私はますます確信を深めたのであった。たまたま近いタイミングで公道プレス試乗会がおこなわれたばかりの新型車、というだけでは明らかにないナニモノかまたはナニゴトかが、このケースに関してはある。なお、「ますます」なのは、もちろん自分でも運転したのと、それともうひとつ、ネット上の試乗記をいくつか読んでいたから。そこでもエクリプス クロス、おおむねかもっと好評だった。あるいは、かなり、おしなべて(「ディーゼルもハイブリッドもないからダメ」みたいなのもなかにはあったけど)。
エクリプス クロスはなぜ、評判がいいのか。ハードウエア上の最大の勝因は、車体というかクルマのホネがしっかりしていること……だろうと私はいいたい。安心感ある走りも快適な乗り心地も、がっしり太い頑丈なホネがあってこそ。
例えばの話、数ある軽トラのなかでスバル製「サンバー」がアタマひとつかふたつ抜けていた要因もそこだと思う(いわく、角パイプによるフルフレーム構造)。「スズキ・ジムニー」が乗ってやたら気持ちよかった要因も、やはり同じようなところにあるはずだ。スバル製サンバーもジムニーも、いわゆる快適な、コンフォタブルな乗り心地の乗用車とはちょっとかもっと違う。違うけれど、クルマのホネがしっかりしていることの気持ちよさや安心感は乗れば(たぶん誰でも)すぐわかる。そしてそれは、最近の多くの(日本の)乗用車からかなり無残に失われている美点でもある……のだけれど、作る側の人も乗る側や買う側(とあと、書く側)の人も、どうもそこに目がいっていない。あんまり。自分のこともコミで、そう思う。パッと乗って、ホネがしっかりしているかどうか。信用してよさそうか。考えてみたら、これほど単純にわかりやすいことはちょっとほかになさそうなものなのに。
三菱の次世代製品群の第1弾として発売された「エクリプス クロス」。2017年のジュネーブショーで世界初公開された。
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ブラックの内装色にシルバーの装飾が映えるインストゥルメントパネルまわり。全グレードで、左右独立温度調整式のフルオートエアコンが標準装備される。
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シート表皮はファブリックが標準だが、「G」「Gプラスパッケージ」にはオプションで前席シートヒーター付きの本革シートも用意されている。
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本革シートには、前席、後席ともにオレンジのコントラストステッチが施されている。
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2017年12月の予約受け付け開始を経て、2018年3月に発売された「エクリプス クロス」。三菱の日本販売車種としては、2014年に発売された「eKスペース」以来、実に4年ぶりの新型車となる。
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ボディー剛性こそすべての基本
クルマの基本ないしよい動質の基礎となる車体=骨格がしっかりした乗用車。最近じゃなくて昔ならフツーにそういうのがいっぱいあったのかときかれると、それはよくわからない。わからないけれど、例えばタイヤのサイズやグリップ性能や車輪の重量ひとつ(じゃなくて3つか)をとっても、走行中の車体側の負担が時代とともにどんどんキツくなっていることは間違いない。車体側といった場合、そこにふくまれるのはまずボディー。そのほかに、ハブやハブキャリアやサスペンションのアームやリンクやピボットのブッシュやサブフレームやサブフレームのマウントのブッシュもある(バネ下とバネ上の重量増の板挟みになっている部分ともいえる)。それら全体が、タイヤ側の進化においつけていない。でたぶん、ニホンシャのハードウエア上の一番のモンダイが(あるとしたら)そのへん。
モノコックに何ニュートンのチカラをかけたら何°ねじれて、だから「剛性は旧型比○%アップ」。そのテの話はよく聞くけれど、乗ってホネが骨太な感じが明瞭な(日本の)乗用車、ロクにない。つまりエクリプス クロス、いまどき貴重な国産乗用車ということである。事情により、はやりの車体軽量化テクノロジー方面のことをやれていない。いまのミツビシなので、そういうことはある。でも(あるいは、むしろかえってそのおかげもあって?)、乗るとイイ。ヨカッタ。だったらいっそ、アンチ軽量化路線で突っ走りましょう!! そういったら、技術者の人は笑った。「いやいや、そういうわけにも……」。
車体のウェイトは落とす。でもホネはしっかりさせたまま。あるいは、もっとしっかりさせながら。ただしもちろん、決められたコストの枠内で。シロート考えでも、それをやるのはとっても難しい。やらなきゃイカン、のではあろうけれど。「でも、もし車体の軽量化とひきかえに乗り心地の快適さが犠牲になってしまったとしたら、それは、お客さまにとっては全然いいことではないですよね」……といったのはプログラム・ダイレクター。開発チームのリーダーの人。「ボディー剛性をしっかりさせないとダメ、というのが私の持論みたいなものです」。クルマを運転したあとに話を聞いたのでそれなりに、つまりちゃんと説得力があった。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4405×1805×1685mm。サイドビューではリアコンビランプへと斜めに走るキャラクターラインと、それに沿うように傾けられたベルトラインが目を引く。
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ラジエーターグリルやバンパーの中央部を、“く”の字形のメッキ装飾で左右からはさむ、「ダイナミックシールド」と呼ばれる意匠が特徴のフロントまわり。2015年6月に登場した「アウトランダー」の改良モデルから導入されている、三菱独自のデザインコンセプトである。
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テスト車にはディーラーオプションとして用意される、カーボン調の模様と赤いラインが目を引く外装パーツが装着されていた。
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前後バンパーを飾るシルバーのガーニッシュも、ディーラーオプションとして用意されているアイテムである。
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パワートレインもブレーキも扱いやすい
各論編としてはこのクルマ、まずエンジン+トランスミッションがよい。CVTじゃないみたいに運転しやすいですね、と私はいった。技術者いわく、「パワートレインの車両適合は最後のギリギリまでずーっとやってました」。なるほど。ギリギリまでやっていればいいというものではないが、デキがいいのは議論の余地なくいい。CVTがCVTみたいじゃないのは、もちろんトランスミッションの制御によるところもある。でも半分はエンジンのおかげ。過渡応答特性(ヨコモジだとスロットル・レスポンス?)がいいから運転しやすくできる。私はCVTを好きではない。トランスミッションのハウジングのなかにあんなもの(一対の可変プーリーとそれらをつなぐ駒ベルトやチェーン等)が入っていると思うだけでイヤだけど、でも運転してイイものはイヤではない。
テキトーなルートで走っていたら、上りのワインディング区間、タイトなコーナー、帰りは下り。そんな状況でも、セレクターのポジションをDから動かす必要は特にない。あまりない。そのまんまイケる。運転しやすいまま。下り坂でエンジンブレーキを利かせる制御もちゃんと効いてくれる。それでも足りなきゃ左のパドルをチョン。またはチョンチョン。せいぜい、それぐらい。
ブレーキ関係も扱いやすい。で聞いてみたところ、今回はペダルを踏み増した際の制動Gの応答のよさに気をつけてチューニングというか仕込みをやったという。でまた、ナルホド(乗った感じと説明とが一致しているっぽいぞ、という意味)。ブレーキペダルに最初に踏力をかけて、たしかにパッドがディスクをかんだ。当たった。でも、そこからさらに踏力を強めても「あれれ!? なんかスベッてるっぽいぞ!?」……みたいなのがないように。もちろん実際には停止するまでずっとスベッてて(というかコスれ合っていて)アタリマエなのだけど、踏力に応じてちゃんと食い付き感が強まるように。踏んでもスカッと利かなかったり、あるいは逆にミョーにキュッとかガッと唐突に強く利いてしまったり。要は、そういうことがない。だから、初めて乗って走りだして一発目のブレーキから不安やビックリがない。ブレーキ関係にかぎらず、エクリプス クロスはそういうクルマ。
最高出力150ps、最大トルク240Nmを発生する1.5リッター直4ターボエンジン。状況に応じてポート噴射と筒内直接噴射を使い分ける燃料噴射システムや、電動ウェイストゲートバルブ、ナトリウム封入中空バルブなどの採用により、出力の向上と低回転域でのトルクアップ、デポジット(堆積物)の抑制による耐久性向上などを図っている。
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センターコンソールに配置されたシフトセレクター。トランスミッションには、8段の疑似ステップ変速も可能な「INVECS-III」と呼ばれるCVTが採用されている。
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ハンドルから手を離さずに変速が可能なシフトパドル。グレードや駆動方式を問わず、全車に標準で装備される。
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メーターはアナログの2眼式。中央部にはカラー液晶のマルチインフォメーションディスプレイが装備されている。
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ヘンなところのない足まわりの素晴らしさ
ハンドル関係も扱いやすい。電動パワステ物件ならではの各種のイヤみ(真ん中のところがガチッと固着しているとか、そこからさらにエイッと動かすと急にスカッと手応えが抜けるとか)があまりないというか気にならなくてわりと素直なのはいいとして、でもこれ、この感じ……。技術者(というか、評価ドライバー)によると、真ん中からホンの少し、時計の秒針でいうと12時の位置から左右にたぶん(というのは話してたときの彼の身ぶりをいま言葉にしてるので)3秒ぶんぐらい動かしたときの「舵の効きの感じ」がいいようにというのを気をつけたとのことであった。あったのだけど、やはり、このというかあの感じ……。
乗ったときのことでいうと、例えばカーブを曲がるとき。車体のロールのことを気にしないで、進路つまり自分がクルマにいかせたい方向のことだけを考えてハンドル操作をしていればOKな感じ。それが、エクリプス クロスのハンドル操作関係では特に印象的だった。あとはそう、ちょっとハンドルをきったらガッと急激にハナ先が反応して、思わず操作を止めてしまって……というのがなかったのも。とにかく、すごくラクだった。
- フロントのキャスター角:2°半
- フロントのキャスタートレール量:17.4mm
操安担当の技術者に上記の数値を教えてもらって私は「おお」となった。簡単にいうと、転舵系のジオメトリーがごくフツー……というか、キョクタンなことをしていない。いまどきすごく珍しい……かどうかは、そんなに何十台も調べたわけではないのでアレだけど。エクリプス クロス、フロントのキャスター角でいうと、立っている。同じくキャスタートレール量でいうと、少ない(というか、多すぎない)。余計なことを気にせず思ったとおりハンドルをきっていって正解、というよい特性をモノにするにあたって、これらはまず間違いなく効いているはずだ。でないと説明がつかない。乗った感じとの整合がとれない。
サスペンション形式は前がマクファーソンストラット、後ろがマルチリンク。ダンパーにリバウンドスプリングや応答性に優れたバルブを採用したり、リアサスペンションに中間板入りのブッシュを採用するなどして、操縦安定性の向上やダイレクトな操舵フィールなどが追求されている。
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ステアリング機構は「アウトランダー」のラック&ピニオン式電動パワーステアリングをベースに改良を施したもので、ギア比をよりクイックにするとともに、操作音の低減、操舵フィーリングの改善などが図られている。
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「エクリプス クロス」の装備における目玉のひとつである、スマートフォン連動ディスプレイオーディオ。「Gプラスパッケージ」に標準装備される。
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ディスプレイオーディオの操作に用いる、タッチパッド式のコントローラー。ボイスコマンド機能による音声操作も可能となっている。
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日本の乗用車だって、やればできる
あと特筆点として、後席のコーゴさん(フォトグラファー)が喜んでいた。ヘンな揺れが出なくて快適で、ヒッパリ等の撮影の仕事もやりやすかったから(今回のエクリプス クロスは、この日乗っていった「ルノー・キャプチャー」を写真に撮るためのカメラカーにもなったのです)。正確なコメント内容はメモしなかったのでアレだけど、要約すると、「キレイなサイン波状に揺れながら、その揺れが収束していく感じ」がヨカッタ。「あと、あんなしなやかなタイヤ、アフターマーケット向けのトーヨーにもあるんですかね!?」(談)。ちなみにコーゴさん、この日乗ってきたマイカー……ではなく奥さんカーの「シトロエンC4ピカソ」(旧型)にトーヨーを履かせていた。
エクリプス クロスは評判がいいとして、ではなぜそうなのか。私にいわせれば、答えは簡単。「運転しやすく快適な、フツーにちゃんとできたクルマだから」。
スバル製サンバーがサイコー!! とか「ボンゴ」がベスト・マツダとか旧顔「トヨタ・プロボックス」がナイスとかいってると、「モリケータ、ただの商用車萌え」。スズキの「SX4 Sクロス」や「エスクード」(MADE IN HUNGARY物件)の乗り心地がすばらしいとかいってると、「モリケータ、欧州車かぶれ」。ま、わかりませんけど。あと、骨太ガッチリ系乗用車では「シボレー・ソニック」。外せない。でも、エクリプス クロスはフツーに国産のミツビシの、フツーの乗用車。はっはっは。そういえば、「デリカD:5」もヨカッタ。
(文=森 慶太/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
タイヤサイズは「M」が215/70R16で、「G」「Gプラスパッケージ」が225/55R18。テスト車にはトーヨーの「プロクセスR44」が装着されていた。
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リアビューの特徴となっている、ガラスエリアを上下に分断するLED式のテールランプ。後方視界とデザイン性を損なわないよう、リアワイパーはルーフスポイラーの奥に配されている。
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三菱の世界戦略車として、日本より早い2017年秋から欧州向け、オセアニア・アセアン地域向け、北米向けの出荷が順次開始された「エクリプス クロス」。最終的には世界約80カ国に導入する計画となっている。
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テスト車のデータ
三菱エクリプス クロス Gプラスパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4405×1805×1685mm
ホイールベース:2670mm
車重:1590kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:150ps(110kW)/5500rpm
最大トルク:240Nm(24.5kgm)/2000-3500rpm
タイヤ:(前)225/55R18/(後ろ)225/55R18(トーヨー・プロクセスR44)
燃費:14.0km/リッター(JC08モード)
価格:309万5280円/テスト車=380万1942円
オプション装備:電動パノラマサンルーフ(12万4200円)/本革シート<運転席・助手席シートバックポケット>+運転席パワーシート+運転席・助手席シートヒーター(24万8400円) ※以下、販売店オプション ETC車載器(2万9721円)/フロアマット<プレミアム>(3万0045円)/バンパーガーニッシュパッケージ<フロントバンパーガーニッシュ+リアバンパーガーニッシュ>(6万2553円)/エクステンションパッケージ<サイドエクステンション+フロントコーナーエクステンション+リアコーナーエクステンション>(14万2862円)/トノカバー(2万0152円)/ラゲッジマット(1万0800円)/ドライブレコーダー(3万7929円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1610km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
三菱エクリプス クロス Gプラスパッケージ
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