“脱フィアット化”でブランド復権をもくろむ

1910年にブランドが設立された当初の“強いレーシングカーメーカー”だった時代を、今一度敬意を持って振り返り、これまでのように個性あふれるデザインのみならず、「固有のハードウエア」という部分にも力を入れ直すことでブランドの再定義をもくろむ昨今のアルファ・ロメオ。

具体的には、親会社であるフィアットの作品との共有性を高めるべく採用してきたFFレイアウト前提のボディー骨格などを、この期に及んで“見直し”。多額の投資を行って、全く新しいFRレイアウトをベースとした骨格を開発・採用することで、あらためて純粋なプレミアムブランドとしての地位を確立させよう、というのが、FCAグループのCEOであるセルジオ・マルキオンネ氏が考えるすこぶる野心的なシナリオなのだ。

ちなみに、「124スパイダー」が当初アナウンスされていたアルファ・ロメオではなく、フィアットとアバルトのブランドに属することとなったのも、急転直下に決定されたそんなシナリオの結果と推測ができる。

いかにオープンボディーの持ち主とはいえ、「『マツダ・ロードスター』がベースのモデルでは、新時代のアルファ・ロメオが必要とするプレミアムのレベルには達しない」というのは、なるほど前述の考え方を基準とすれば正しい判断であるのかもしれない。

FRならではのプロポーションと前後重量配分

かくして、満を持しての誕生となったのが1960~70年代に人気を博した往年のモデル名を冠した新生ジュリア。そのボディーサイズに目をやれば、このモデルが“ジャーマン3”の作品を中心に、すでに激しい戦いを繰り広げているプレミアムDセグメントへと投じられた挑戦者であることは明白。まずはセダンのみでの発表となったが、機が熟した折には、よりルックスオリエンテッドなクーペボディーの追加などもあり得ることは、当然想定内というものだろう。

スラリと伸びたフロントフードに、後ろ寄りのキャビンセクション。すなわち、なんとも明瞭なる“ロングノーズ&ショートデッキ”のプロポーションは、あらためて自身がFRレイアウトの持ち主であることを、無言のうちに強くアピール。ちなみに、今回テストドライブを行った、「後輪駆動仕様のヴェローチェ」の前後軸重は、820kg/810kgとほぼ完璧な50:50の配分。既存の4WD仕様に比べると、車両重量はちょうど40kgのマイナスという関係となる。

そこに8段ステップATとの組み合わせで搭載される、最高出力280psを発するツインスクロールターボ付きの2リッター4気筒ガソリンエンジンは、4WDモデルと同一のユニット。専用デザインのバンパーやツインエキゾーストパイプ、スポーツレザーシートなど、このグレードならではの装備群も4WDモデルに準じた設定だ。

パワープラントの出来栄えはBMWに比肩する

そんな最新のジュリアで走り始めると、まずなんとも感心させられたのはその動力性能だった。

単に加速力にたけているというだけではない。低回転域から高回転域まで、スムーズかつ回転の伸びに伴って活気を増していく様は、エンジンコンストラクターとして名をはせた、あのBMWの4気筒ユニットをしのぐとすら感じられるもの。そんなエンジンのキャラクターを見事に引き出すトランスミッションの出来栄えや、排気音のみでごまかすことなく、いかにも緻密な機械が生み出していることが連想できるメカニカルなサウンドも、そんな好印象をさらに引き立てる原動力となっていた。

低回転トルクが思いのほか強力で街乗りシーンではカタログスペックから察する以上に活発に走ってくれる、というのは、確かにいわゆる“ダウンサイジングターボエンジン”を搭載したモデルでは昨今頻繁に味わえるテイスト。しかし、このモデルの場合はそうした“ありがちな部分”のみではなく、アクセルペダルを深く踏み込んで高回転域へと至った場面でも頭打ち感を示すことなく、「上まで回してみたら期待外れ」という感覚がまったく伴わないのが特筆すべきポイントなのである。

正直、アルファ・ロメオの作品で「ここまで動力性能に感銘を受ける」というのは、われながらちょっと意外でもあった。もちろん、フラッグシップグレードの「クアドリフォリオ」、すなわちフェラーリユニットとの血縁関係が指摘をされるツインターボ付きV6エンジン搭載モデルのような、“怒涛(どとう)の速さ”はそこにはない。けれども、フィーリング的にはそんな特別な心臓にも勝るとも劣らない価値を味わわせてくれるのが、ヴェローチェの4気筒エンジン+8段ステップATから成るパワーパックなのだ。

今後のためにも改善してほしい

一方で、当初はきっと“そこ”でこそ感動をさせてくれるのだろう、と期待をしたフットワークに、むしろちょっとばかり精彩を欠く印象を覚えてしまったことも、また意外な発見だった。端的に言って、このモデルのフットワークの仕上がりは、自身が予想と期待をしていたレベルには達していなかったということだ。

舗装の行き届いた完全に平滑な路面上での振る舞いは、このクラスのスポーティーなセダンとしては納得のいくもの。前述した前後が均等な重量配分もあってか、4輪がしっかりと仕事をしながら、コーナーをヒラリヒラリとクリアしていく様は、ライバルの中にあっても特にこのモデルが強く意識したであろうBMWの「3シリーズ」と比べても、決して見劣りしない人とクルマの一体感を提供してくれる。

が、ひとたび路面が荒れ始めると時に大きな揺すられ感に見舞われるなど、途端にボディーに無駄な動きが目出ってしまう。いかに「お金の掛け方が違う」とはいえ、同じジュリアでもなかなか心地良いフットワークを味わわせてくれたフラッグシップのクアドリフォリオの仕上がりとは、かなり大きな印象の違いがあると言わざるを得ないのだ。

そもそもジュリアシリーズの場合、クアドリフォリオ以外ではランフラットタイヤが装着されるが、今回のモデルもすでに走りだしの早々から「それを履きこなせていない」感が強かった。すなわち、街乗りシーンでも路面凹凸を拾った際に、それに伴うとがった波形の振動が、時に不快な印象へとつながってしまうのだ。

歴史と伝統あるブランドの再構築への期待を込めて、ついに世に送り出された新型ジュリアが“価値ある一台”であることにもちろん異論はない。けれども、スマホとのミラーリングで済ませようというナビゲーションシステムの設定や、一部にチープさが認められるインテリアの素材感、そして前出の乗り味など、まだ「煮詰めの甘さ」が想起される部分も皆無ではない。

何しろ、メーカーをあげて、そして国をあげての群雄割拠というのがこのカテゴリーの今の状況。「勝負はこれから」なのである。

(文=河村康彦/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)

テスト車のデータ

アルファ・ロメオ・ジュリア ヴェローチェ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4655×1865×1435mm
ホイールベース:2820mm
車重:1630kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:280ps(206kW)/5250rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2250rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91Y/(後)255/40R18 95Y(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3 ランフラット)
燃費:12.0km/リッター(JC08モード)
価格:587万円/テスト車=592万2380円
オプション装備:Alfa RomeoオリジナルETC(1万1340円)/フロアマット プレミアム(4万1040円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:4473km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:598.3km
使用燃料:50.3リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.9km/リッター(満タン法)/11.4km/リッター(車載燃費計計測値)
 

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