トヨタがルマン24時間レースで悲願の初優勝

2018.06.18 自動車ニュース
表彰台の中央で、優勝した8号車のドライバーらが高々とトロフィーを掲げる。(写真=島村元子<Motoko Shimamura>)
表彰台の中央で、優勝した8号車のドライバーらが高々とトロフィーを掲げる。(写真=島村元子<Motoko Shimamura>)拡大

2018年6月16~17日、フランスのサルトサーキットで第86回ルマン24時間レースが開催され、S.ブエミ/中嶋一貴/F.アロンソ組のNo.8 トヨタTS050 ハイブリッドが優勝した。トヨタにとっては、悲願のルマン初制覇。日本メーカーのマシンを日本人ドライバーがドライブしての優勝は、史上初のこととなる。

予選に臨むNo.8 トヨタTS050 ハイブリッド。安定した走りでトップタイムをたたき出した。
予選に臨むNo.8 トヨタTS050 ハイブリッド。安定した走りでトップタイムをたたき出した。拡大
ポールポジション獲得を喜ぶ、8号車のドライバーたち。写真右から、S.ブエミ、中嶋一貴、そしてF.アロンソ。
ポールポジション獲得を喜ぶ、8号車のドライバーたち。写真右から、S.ブエミ、中嶋一貴、そしてF.アロンソ。拡大
こちらは、小林可夢偉がステアリングを握る7号車。予選では8号車に次ぐ2番手となった。
こちらは、小林可夢偉がステアリングを握る7号車。予選では8号車に次ぐ2番手となった。拡大
サーキットに並んだ、今年のルマンの参戦車両。市販車両に近い形状のGTマシンも数多く出走する。
サーキットに並んだ、今年のルマンの参戦車両。市販車両に近い形状のGTマシンも数多く出走する。拡大

予選から強さをみせたトヨタ

2016年、世界耐久選手権(WEC)からアウディが撤退したのに続き、2017年はポルシェがルマン終了後に「WEC卒業」をアナウンス。2018年のルマン24時間レースで、最高峰クラスLMP1にマニュファクチャラーとして参戦するのは、トヨタの2台だけになってしまった。

ハイブリッドシステムを搭載するトヨタのマシンに対し、プライベーターは“ノンハイブリッド”車両で出場。大きく異なる性能での競争は意味をなさないことから、トヨタは主催者側と綿密なミーティングを繰り返し、それぞれの優位性を生かしたルール作りを行うことで、よりイコールコンディションに近い戦いができるよう調整を続けてきた。結果、最高峰のLMP1クラスには合計10台がエントリー。トヨタは悲願のルマン優勝に向けて、ライバルとともにスタートラインに立つことが可能になった。

プライベーターチームのドライバーからは、レースを前に「ノンハイブリッド車はコーナーが速くてもストレートのスピードで劣るから、走行車両の多いルマンではトヨタを追い上げること自体がストレスになる」などと、厳しい意見も聞かれた。一方、ルマンで3度優勝した経験のあるA.ロッテラーは、「どういう戦いになるかわからないのがルマン。机上の計算ではトヨタを打ち負かすことは難しいけれど、レースは見てのお楽しみ。僕らにいいことがあればと思っている」とコメント。過酷な耐久戦ならではの不確定要素に触れつつ、「チェッカーを受けるまでが戦い」というレースの本質を強調した。

今年のルマンは、公開車検が行われたレースウイーク序盤まで、雨が絡む不安定な天候だったが、予選が始まった6月13日からは時折日が出るまでに回復。予選初日は、開始直後からアタックをかけたトヨタTS050 ハイブリッドの2台がワンツーとなり、F1の現役ドライバーながらルマン参戦を決めたF.アロンソもチームドライバーのひとりとして粛々とミッションをこなした。そして迎えた予選2日目。薄曇りの中で始まった2回目の予選は、開始早々から赤旗中断が続いたことでセッションが予定より早めに打ち切られ、代わって最後の予選3回目が30分延長された。

そのセッション開始とともに、すぐアタックしたのは中嶋一貴の8号車。3分15秒377をマークし、初日に自ら記録したトップタイムを更新した。一方、一貴より3分ほど遅れてコースインした7号車は、小林可夢偉がアタックラップに臨むもコース上でGTクラスの車両に引っかかり、3分17秒523どまり。初日に記録した自身のベストタイムを塗りかえることなくアタックを終えた。とはいえ、トヨタの2台は予選でワンツー獲得に成功。一貴にとっては、自身2度目となるルマンでのポールポジションとなった。

予選総合トップ6
1. No.8 トヨタTS050 ハイブリッド(S.ブエミ/中嶋一貴/F.アロンソ)3分15秒377
2. No.7 トヨタTS050 ハイブリッド(M.コンウェイ/小林可夢偉/J-M.ロペス)3分17秒377
3. No.1 レベリオンR13ギブソン(A.ロッテラー/N.ジャニ/B.セナ)3分19秒449
4. No.17 BRエンジニアリングBR1(S.サラザン/E.オルドゼフ/M.イサーキャン)3分19秒483
5. No.3 レベリオンR13ギブソン(T.ローラン/M.ベッシェ/G.メネゼス)3分19秒945
6. No.10 BRエンジニアリングBR1ギブソン(H.ヘドマン/B.ハンリー/R.バン・デル・ザンデ)3分21秒110

決勝前のセレモニー。戦闘機が華麗な編隊飛行で25万人を超える観客を沸かせた。
決勝前のセレモニー。戦闘機が華麗な編隊飛行で25万人を超える観客を沸かせた。拡大
現地時間の6月16日15時、2台の「トヨタTS050 ハイブリッド」を先頭に、長い戦いの火ぶたが切られた。
現地時間の6月16日15時、2台の「トヨタTS050 ハイブリッド」を先頭に、長い戦いの火ぶたが切られた。拡大
トヨタの2台は、ワンツー体制を維持しつつ、トップ争いを展開した。
トヨタの2台は、ワンツー体制を維持しつつ、トップ争いを展開した。拡大
こちらは、M.クリステンセンらが駆るNo.92 ポルシェ911 RSR。LMGTE Proクラスで優勝した。
こちらは、M.クリステンセンらが駆るNo.92 ポルシェ911 RSR。LMGTE Proクラスで優勝した。拡大
夕日に照らされたサルトサーキットを、レーシングマシンが駆け抜ける。
夕日に照らされたサルトサーキットを、レーシングマシンが駆け抜ける。拡大
夜間、ピットストップを行うNo.8 トヨタTS050 ハイブリッド。
夜間、ピットストップを行うNo.8 トヨタTS050 ハイブリッド。拡大
勝利のチェッカードフラッグの後、観衆の祝福を受けつつ凱旋(がいせん)する8号車。
勝利のチェッカードフラッグの後、観衆の祝福を受けつつ凱旋(がいせん)する8号車。拡大
2人のチームメイトに担がれた中嶋一貴(写真中央)。ルマン24時間において、日本人ドライバーが日本のマシンで優勝したのは初めてのことである。
2人のチームメイトに担がれた中嶋一貴(写真中央)。ルマン24時間において、日本人ドライバーが日本のマシンで優勝したのは初めてのことである。拡大

優勝できてホッとした

レースウイーク中で最も安定した天候の下、決勝のスタートを迎えた2018年のルマン。オープニングラップでポールポジションからスタートした8号車に予選3番手のレベリオンR13ギブソンが軽く接触するハプニングが発生し、代わって7号車のトヨタが先行。さらに8号車は最初のルーティンワークとなるピット作業でカウルを交換するなど、やや慌ただしい幕開けとなった。

だが、その後トヨタの2台はしっかりと、地に足のついた走りで周回。ワンツー体制を強固なものへとしていった。トヨタが安定したラップタイムを刻む一方、ライバルとして有力視されていたレベリオンレーシングの1号車と3号車には車両トラブルが続き、しばしばガレージ内で長時間の修復作業を強いられることになった。開幕戦に投入したばかりの車両だけに、不安定な要素をはらんだまま戦いを強いられたのは間違いない。

逆にトヨタはこれまでのルマンで散々辛酸をなめた教訓を生かし、信頼性を改善してきた。レース中はカウルを交換することはあっても、慌ただしくガレージに車両を入れて修復を迫られるというようなことはなかった。それどころか、時に一貴と可夢偉の日本人ドライバー同士が激しいバトルでレースを沸かせたり、深夜のコースでチームメイトに引けを取らない速さを“ルーキー”F.アロンソが見せつけるなど、チームとしても存在感をアピールしていたのは確かだ。

レース展開としては、淡々と時間が経過するといった様相で、大きなハプニングやドラマもなく、正直物足りない一面もあった。その中でトヨタの2台が終盤まで同一周回でトップ争いを継続し、いずれが勝つか、最後の最後まではらはらさせたことは幸いだった。結局は、「センサーのトラブルがあって、レース中に車両セッティングを変更することができなかった」と可夢偉が言うように、7号車は状況にうまく対処できず、逆に8号車は、これまでの経験を生かしてルマンに適応してみせたアロンソの尽力もあり、戦いを優位に進めることができたといえる。

2016年にチェッカーまで残り3分のところで優勝をつかみ損ねた一貴は、肩の荷が下りたのか「優勝できてホッとしたというのが正直な気持ち」と、穏やかな笑顔をみせていた。シリーズカレンダーの変更により、今シーズンは18カ月続く“スーパーシーズン”として開催されることになったWEC。その最終戦となる2019年のルマンでは、ディフェンディングチャンピオンとしてライバルを迎え撃つことになる。

決勝結果(トップ6

1. No.8 トヨタTS050 ハイブリッド(S.ブエミ/中嶋一貴/F.アロンソ)388周
2. No.7 トヨタTS050 ハイブリッド(M.コンウェイ/小林可夢偉/J-M.ロペス)386周
3. No.3 レベリオンR13ギブソン(T.ローラン/M.ベッシェ/G.メネゼス)376周
4. No.1 レベリオンR13ギブソン(A.ロッテラー/N.ジャニ/B.セナ)375周
5. No.26 オレカ07ギブソン(R.ルシノフ/A.ピッツィオーラ/J-E.ベルニュ)369周
6. No.36 アルピーヌA470ギブソン(N.ラピエール/A.ネグラオ/P.ティリエ)367周

クラス別トップ

・LMP1クラス:No.8 トヨタTS050 ハイブリッド(S.ブエミ/中嶋一貴/F.アロンソ)388周

・LMP2クラス:No.26 オレカ07ギブソン(R.ルシノフ/A.ピッツィオーラ/J-E.ベルニュ)369周

・LMGTE Proクラス:No.92 ポルシェ911 RSR(M.クリステンセン/K.エストーレ/L.ファントール)344周

・LMGTE Amクラス:No.77 ポルシェ911 RSR(C.リード/M.キャンベル/J.アンロエア)335周

(文=島村元子<Motoko Shimamura>/写真=TOYOTA Motorsport GmbH、フランス西部自動車クラブ<ACO>、島村元子<Motoko Shimamura>)

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