最近では珍しいゴーゴー偏平タイヤ

今回試乗したアテンザは白。強すぎる広島カープレッドじゃなくてよかった。色はともかく、カメラマンが撮影しているのをちょっと離れた場所から見ていて、ふとタイヤが小さいことに気付いた。カタログを見ると225/55R17とある。アテンザも上級グレードなどには225/45R19という大径タイヤが備わるが、今回の試乗車は「プロアクティブ」という中間グレードで、このサイズが備わっていた。

近頃は50偏平だと控えめなほうで、45とか40偏平のタイヤがさして高性能でもないクルマにも装着されている。大径で低偏平のタイヤが装着されているほうがカッコいいという風潮になったのはいつからか。最初は性能向上、つまりグリップ力を高め、変形を減らすために大径化、低偏平化が進んでいったはずだが、近頃はコスメティックチューンとして大径化と低偏平化が進められている。ダンパーの進化によって、メーカーがその車種のオプションとして設定している程度のインチアップならば乗り心地が悪化するということもあまりなくなったというのもあるだろう。

けれども、世の中に大径、低偏平タイヤを装着しているクルマがはびこっているからか、控えめにゴーゴー偏平にとどめたアテンザが、新鮮で、上品に見えた。悪くない。ダークな塗装のためホイールが際立たないというのもあるのかもしれないが、とにかく全体のバランスはいいなと感じた。カッコよさをタイヤ&ホイールの大径化に頼っているクルマが多すぎる。アテンザはその割合が低いのではないか。

インテリアの装飾もちょっと控えめ

マツダが2018年5月にアテンザをマイナーチェンジした。これがフルモデルチェンジ前の最後の大がかりな変更となるだろう。フロントグリルは横桟タイプからメッシュというかドットタイプに変わった。その脇のクロームパーツはヘッドランプの下端をなぞるように伸びた。従来ラーメンマンのひげみたいな角度だったアンダーグリル両脇の細いクロームパーツは水平になった。リアも左右のコンビランプをクロームパーツが結ぶようなデザインとなった。

中間グレードのプロアクティブの場合、車内はやや質素だ。レザーシートではなくツートンのクロス(布)シートが備わる。座り心地は悪くない。レザーよりも表面がソフトだから密着感があって好ましい。上級グレードのダッシュパネルにはウルトラスエード「ヌー」(東レ製)という素材が用いられるのに対し、プロアクティブはビニールレザー的な素材が貼られる。これはちょっと上級グレードがうらやましい。

それにしても現行アテンザは出た時からスタイリッシュなセダン/ワゴンだったが、飽きられないよう数年ごとにデザインに手が加えられた結果、現在まで新鮮さを保っていると思う。

自慢のディーゼルエンジンの性能も強化

かつてマツダといえばロータリーだったが、最近ではマツダといえばディーゼルだ。もっとも当のマツダはあまりそういうイメージになってほしくないのだろうが。今回のアテンザに搭載されるのも2.2リッター直4ディーゼルターボエンジンだ。このエンジンはこれまでも多くのマツダ車に搭載されてきたものだが、「CX-8」が発売されたタイミングで最高出力が従来の175psから190psへと、最大トルクが420Nmから450Nmへと進化した。それが今回アテンザにも搭載されたというわけだ。

175ps、420Nm時代のアテンザでも特に動力性能に不満はなかったが、パワーアップは邪魔にはならない。アクセルペダルを深く踏んだ際により鋭い加速が得られるようになったのはいいことだ。もっといいのは、余裕が増したことで、同じ加速を得るのに深くペダルを踏まなくてもよくなったことだ。A地点からB地点に同じ時間をかけて移動したとしても、パワフルなクルマで行くほうが疲れないというのは“クルマあるある”だ。アクセルペダルを深く踏まないということはエンジンの回転数を上まで使わなくて済むということであり、そのほうが静かというのもあるのだろう。

実際、今回の試乗でアテンザのパワーアップを明確に体感したかというとそうでもないが、静粛性が向上したのは体感できた。同乗者は打ち明けられるまでディーゼル車であることに気付かないのではないか。冷間時のアイドリングのみカラカラという音が少し目立つが、最近はガソリンエンジンも直噴が主流であり、これくらいの音を立てるクルマもけっこうある。4気筒ディーゼルとしては最も静かな部類に入る。ただしこの静粛性はエンジンの音量を減じる努力だけでなく、音が車内に侵入する際の到来方向などを考慮した遮音材の採用など、車両全体の改良によって獲得したものだという。

次期アテンザは直6搭載のFR!?

その結果、あくまでイメージだが、路面からの入力をダンパーのみに任せず、ボディーも含めた車両全体で受け止めているような印象をアテンザに抱いた。コーナーにおけるボディーのロールの仕方は漸進的で唐突なところがない。ステアリングフィールはしっとり系で剛性感も高い。全体的に完成度が高い。マイナーチェンジされたアテンザの白眉は乗り心地とハンドリングのバランスのよさ。2017年に、マツダが所有する美祢自動車試験場(旧美祢サーキット)で、2019年に登場する次期「アクセラ」と思われる新型車に試乗した。まだ外観ができあがっていない(できていても見せるわけにいかない)ために現行アクセラの外板を無理やり貼り付けた試作車だったが、その乗り心地のよさに感心した。その車両には試作段階のガソリン自着火の新エンジン「スカイアクティブX」が搭載されていたが、それよりも新開発のボディーの出来の良さに驚いた。今回のアテンザには、次世代ボディーに施すさまざまな新設計のうち、現行世代の車両にも使える部分をいくつか採用したという。

次期アテンザはいつ出るのか? 2020年あたりだろうか。マツダが直6エンジンを搭載したFRセダンを開発しているといったうわさも聞くが、それは次期アテンザなのだろうか。それともアテンザよりも上級なサルーンが登場するのだろうか? 「ルーチェ」か? 「ロードペーサー」か? それとも「アマティ」か!? それは時がくればわかるだろう。いずれにせよ、クルマはあとからどんどん新しいのが出てくるが、今回乗った現行アテンザの最終モデルなら、新しいのに目移りせず、じっくりと長く付き合えるのではないだろうか。

(文=塩見 智/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

テスト車のデータ

マツダ・アテンザセダンXDプロアクティブ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4865×1840×1450mm
ホイールベース:2830mm
車重:1610kg
駆動方式:FF
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:190ps(140kW)/4500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgfm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/55R17 97V(後)225/55R17 97V(ブリヂストン・トランザT005A)
燃費:20.2km/リッター(WLTCモード)
価格=340万2000円/テスト車=365万5800円
オプション装備:ドライビングポジションサポートパッケージ<運転席10wayパワーシート&シートメモリー+運転席&助手席シートヒーター+ステアリングヒーター>(6万4800円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)/360°ビューモニター+フロントパーキングセンサー<センター/コーナー>(4万3200円)/Boseサウンドシステム<オーディオパイロット2>+11スピーカー(6万4800円)/ナビゲーション用SDカードPLUS<16GB>(4万8600円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2822km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:365.5km
使用燃料:26.1リッター(軽油)
参考燃費:14.0km/リッター(満タン法)/14.3km/リッター(車載燃費計計測値)

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