フェラーリ812スーパーファスト(FR/7AT)
地平線の向こうまで 2018.10.31 試乗記 フェラーリのフラッグシップモデル「812スーパーファスト」は、その車名からも分かるように最高出力800psとなる伝統のV12エンジンをフロントミドに搭載している。限界特性を知るにはサーキットで走らせるしかないが、主に今回は日常使いについてリポートする。その従順さに驚くはず
アクアラインを行ったり来たりするだけでフェラーリ812スーパーファストについて書け、なんて無理難題もいいところだし、なによりフェラーリのフラッグシップモデルに対して無礼千万ではないだろうか。だからサーキットを借りよう、とClubpyme編集部に頼み込んでもしようがないことは百も承知だが、それにしても、である。これは6.5リッターの自然吸気V12エンジンから800psを迸(ほとばし)らせる、スタンダードモデルとしては史上最強最速のロードゴーイングフェラーリである。まるでチーターを狭い庭先で飼え、と言われているようなものではないか。幸い、他の機会に乗っていたからいいけれど、そうでなければ何とか遠慮したいと考えたはずである。
ただし、いつも交通量が多いアクアラインを移動するのは何の問題もない。ただ他の交通に交じって普通に走るだけならなんの苦労も技も必要ない。例えばかつての「F40」であれば、誰もいないオープンロードまでの移動はただただ我慢するしかない難行苦行と言えたが、現代のフェラーリはちっともつらくない。それどころか文字通りの意味で快適イージーなのがすごいのである。
ボタンを押してオートマチックを選び、812スーパーファストにとってのノーマルモードに相当するスポーツモードでごく静かにスタートすると、トランスアクスル配置のF1 DCT(7段デュアルクラッチトランスミッション)はわずか1000rpmちょっとでコンコンとスムーズにシフトアップして、メーター上50km/h足らずでトップ7速ギアに入り、そのまままったく不平不満を漏らすことなく従順に走ってくれる。
そのおとなしさ、柔軟さといったら、とても8500rpmで800psをたたき出す超ど級高回転型エンジンとは信じられないほどだ。言うまでもなく、そこからじんわりと右足を踏み込んでいけば、どこまでも理想的な道が続いていればの話だが、地の果てまで際限なく伸びていき、最後には340km/hのトップスピードに達するという。
8800rpmまで(レブリミットは9000rpm)回せば、0-100km/h加速2.9秒というとんでもない瞬発力を見せる。もっとも、本当に驚くべきは融通無碍(むげ)のドライバビリティーだと思う。ハイパワーと驚異的な柔軟性を両立させているところが現代のフェラーリV12が特別である理由だろう。
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