「デカ時計」の苦労は何だった?

ということで、早速東京の店を巡る。大きな店ならどこにでも売っていると高をくくっていたが、意外に難しかった。1店目の有名家電量販店は全滅。2店目の人気総合ディスカウントストアは同じカシオでもアナログのみ。ようやく別の有名家電量販店で発見した。

ボクが選んだ「A158WA-1JFメンズデジタル」は、メーカー希望小売価格3900円+税だが、実売価格は税込み1090円。残っていたポイントを使って、実際には1050円で買えた。

会計を済ませると「サイズ調整しますので、こちらへ」と店員さんが店の一角に誘う。一瞬ボクは「コマ詰め方式のバンドだったのか?」と錯覚したが、普通のスライド式中留(留め具)である。それでも店員さんがボクの腕に巻きつけて調整をしてくれたのには驚いた。さすがおもてなしの国である。

そのカシオ、イタリアに戻ってからあらためて周囲を見回すと、想像以上に愛用者が多い。「ユニクロかぶり」ならぬ「カシオかぶり」が起きるであろうことにやや困惑し、「いつか使えばいいや」としまっておいたのだが、先日いよいよ出番が来た。

というのも、治安が良くない街区と隣り合ったエリアで取材することになったのである。もともとボクはそんな強盗に狙われるような時計は所有していないが、用心に越したことはない。「スマートフォンの時計で代用」という手も考えたが、それ自体をカバンから取り出すことさえ避けたい場面だって考えうる。というわけで、半ば必要にかられた状態での使用開始であった。

ところが装着してみると、どうだ。まるで着けていないような感覚である。ステンレス製バンドのおかげで本体重量は46g。いずれもボクが持っている42mmアルミニウムケース×スポーツバンドの「アップルウオッチ シリーズ2」(62g)より軽く、オートマチックの時計(107g)からすると半分以下である (重量はカシオ以外いずれも実測)。

3年ほど前にようやく収束したものの、デカ時計ブームの頃の窮屈な装着感は何だったのか、笑いがこみ上げてくる。

「磁気」に対する寛容さにも気づいた。今日、世の中には磁気のあるものがあふれている。スマートフォンのスピーカーしかり、カバンひとつとっても留め具にマグネットを使用しているものが多い。そうした状況下で、機械式時計を磁気から遠ざけて扱うのは、もはや不可能に近い。

カシオの説明書には磁気に関して「時計機能には影響はありません」と記されている。不要なとき、マグネットの付いたカバンにも気楽に放り込める。

デザインに関して言えば、その原型となった1980年代を実際に生きてしまったボクゆえ、購入前は「何を今更感」があった。ところが、ベゼルを眺めれば、その中に用いられた色である濃紺は、飽きがきづらく、かつ上品な色彩が選択されていることがわかる。

八角形のケースも隅に突起がないので、袖に引っかからない。時刻を確認したいとき、すぐにめくれる。

カシオの裏ぶたには四角で囲まれた3ケタの数字があって、メーカーのウェブサイトで入力すると該当する説明書が瞬時に参照できる。ファンには当たり前かもしれないが、他社のさまざまなプロダクトでも参考にしてほしいアイデア。
カシオの裏ぶたには四角で囲まれた3ケタの数字があって、メーカーのウェブサイトで入力すると該当する説明書が瞬時に参照できる。ファンには当たり前かもしれないが、他社のさまざまなプロダクトでも参考にしてほしいアイデア。拡大
これまでレトロ感覚という言葉のみで片付けてきたが、購入してあらためて観察すると、タイムレスなデザインである。
これまでレトロ感覚という言葉のみで片付けてきたが、購入してあらためて観察すると、タイムレスなデザインである。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。、(ともに二玄社)、、(ともに光人社)、(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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