人生を楽にする最強の組み合わせ?

話を変えよう。近ごろボクが欧州の人たちと話をしていると、頻繁に話題にのぼるクルマといえば新型「スズキ・ジムニー」である。ヨーロッパでは2018年10月のパリモーターショーで初披露された。

先日会ったイタリア人自動車ジャーナリストで、「トヨタ・ランドクルーザー」(BJ40型)をこよなく愛するジョルジョ・スポルヴェリーニ氏も、今一番気になるクルマは新型ジムニーで、最高にクールだと話す。

そこで思い出したのは、生前モンテカルロに住んでいた自動車評論家ポール・フレールが、日本の自動車誌『カーグラフィック』に記した話だ。彼の知人がドイツ系最新ハイテクプレミアムカーを購入したものの、故障連発でサービス工場入りを毎週のように繰り返した。愛想を尽かした知人は、最後には「これならダチア(筆者注:ルノー・グループのサブブランド。当初コストコンシャスを売りにした)のほうがよかった」と漏らしたという。

さらにジムニーは新車状態もいいが、歴代モデルと同様に泥が付着し、どこかへこんでいたほうがよりサマになる気がする。

磁気を恐れ、打ち傷にビビりながら機械式時計を使うより、カシオのほうがはるかに気楽なのと同様に、ジムニーに乗れば縦列駐車中にバンパーをこすられても、スーパーで隣のクルマにドアをぶつけられても、悔しい思いをしなくていいだろう。

20世紀に服装の簡素化が進んだ最大の理由は、貴族に代表される特権階級の縮小である。だが、もうひとつ自動車の普及に伴う「運転しやすさ」の追求があった。

ジムニーのデザイナーがカシオのスタンダードウオッチを意識したかは定かではない。だが21世紀に、カシオのように小さくベーシックなアイテムやそれに伴うライフスタイルが、前世紀の遺産である自動車のデザインや存在に影響を及ぼしたら痛快である。

カシオ+ジムニーで人生が最高に楽になりそうだ。そう思ってイタリアにおける新型の価格表を見たら「税込み2万2500ユーロから」とある。日本円換算で約288万円。日本国内におけるベースモデルの価格145万8000円からすると、かなりの“高級車”である。

この値段だと、隣のクルマにドアをぶつけられたら少なくとも1カ月は意気消沈する、人間の小さい自分が想像できる。

かくして「自動車界のカシオ=ジムニー」を考えることは断念した筆者であった。

(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=藤沢 勝)

欧州デビューを果たした新型「スズキ・ジムニー」。2018年10月、パリモーターショーで。
欧州デビューを果たした新型「スズキ・ジムニー」。2018年10月、パリモーターショーで。拡大
初代「ジムニー」のイタリア仕様。2008年撮影。
初代「ジムニー」のイタリア仕様。2008年撮影。拡大
2代目。泥はねは「ジムニー」にとって最高のデコレーションである。2007年撮影。
2代目。泥はねは「ジムニー」にとって最高のデコレーションである。2007年撮影。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。、(ともに二玄社)、、(ともに光人社)、(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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