看板は時代を映し出す鏡

き:高速道路から見える看板は、看板広告の甲子園だからですよ!

清:甲子園ですか!

き:他の街角の看板とちょっと違って、すごく時代を反映するんです。昔はたばこが全盛で、そのあと消費者金融になりました。「ワールド」がたくさん並べてたでしょう。

清:並べてましたね! あのインパクトもすごかった。

き:後にアパレルのワールドに訴えられて、「ワールドファイナンス」に変えましたけどね。その後主役はIT系、不動産系と変わりましが、半分くらいは新興企業なんですよ。そこそこ成功したくらいの会社が、高速道路から見える看板広告を出したがるんです。

清:きぬた歯科も?

き:そうです。東京のど真ん中を通る高速道路から見えるところに、特に夜なんかライトに照らされて、ビルの上にドカーンとそびえるわけじゃないですか。血が騒ぐんですよ! 魂が揺さぶられるんです!

清:俺もアレを出したいって!?

き:そうです! 僕は国立大の受験に失敗して、新潟にある私立の歯科大に行ったんです。大きな挫折でした。卒業して、東京の歯科医院に勤務医で入ったんですが、初日に院長さんに言われました。「きぬた君はあんまり都会に行ったことないだろう?」って。実際、東武線に乗って上野に何度か来たことがあった程度でした。

清:東武線ってのがシブイ!

き:で、院長がその日の夜、首都高にドライブに連れてってくれたんですよ。レインボーブリッジを渡った時は、「ここはニューヨークか!?」って思いました。「すげーっ!」って。で、ビルの上には看板広告がずらっと並んでる。俺もいつか出したいな、でも出せないだろうな、って思ったんです。

清:勤務医初日にですか!

き:そうです。高速道路から見える看板広告は、その時代に成り上がった者が載せては消え、載せては消えるんです。春の夜の夢のごとしですね。

清:そ、そんな……(笑)。

(つづく)

(文=清水草一/写真=清水草一、きぬた歯科/編集=大沢 遼)

首都高速研究家でもある筆者にとって、高速道路の看板広告は興味の尽きない分野でもある。
首都高速研究家でもある筆者にとって、高速道路の看板広告は興味の尽きない分野でもある。拡大
「きぬた歯科」看板コレクション特選集その4:JR八王子駅北口前。(写真=きぬた歯科)
「きぬた歯科」看板コレクション特選集その4:JR八王子駅北口前。(写真=きぬた歯科)拡大
「きぬた歯科」看板コレクション特選集その5:JR立川駅北口前。(写真=きぬた歯科)
「きぬた歯科」看板コレクション特選集その5:JR立川駅北口前。(写真=きぬた歯科)拡大
「きぬた歯科」看板コレクション特選集その6:首都高速3号線・東京都世田谷区三軒茶屋付近。(写真=きぬた歯科)
「きぬた歯科」看板コレクション特選集その6:首都高速3号線・東京都世田谷区三軒茶屋付近。(写真=きぬた歯科)拡大
「きぬた歯科」看板コレクション特選集その7:首都高速3号線・東京都世田谷区三軒茶屋付近。その6の裏面となる。(写真=きぬた歯科)
「きぬた歯科」看板コレクション特選集その7:首都高速3号線・東京都世田谷区三軒茶屋付近。その6の裏面となる。(写真=きぬた歯科)拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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