日本で人気の最新ミニバン、北米ではナゼ売れない?【前編】

2008.06.16 自動車ニュース

日本で人気の最新ミニバン、北米ではナゼ売れない?【前編】

いまやミニバン花盛りの日本自動車市場。しかし、そんな売れ筋モデルとて、国内専用モデルであることが多い。そのワケを北米在住のリポーターが分析した。

■国内敵ナシ! アルファード

2008年5月、トヨタの最上級ミニバン「アルファード」がフルモデルチェンジした。図体が大きいこのクルマは、日本国内の高級ミニバン市場でシェア50%を誇る“巨人”でもある。

その強さの秘密は――プレス向け試乗会に参加してわかったのだが――やはりデザインにあるだろう。
アルファードの実質的な開発を行っているトヨタ車体のデザイナーは言った。「我々は大型ミニバン、大型SUVのスペシャリスト。ミニバンには乗用車とは全く違うデザイン発想が必要なのです」。
たとえば、3.5リッターV6を搭載するアルファードの重厚な乗り心地。オットマン機能で優雅な気分に浸れるシート。インテリアのレイアウトやディメンションは、普通の乗用車感覚ではあり得ない。
日産エルグランドも日産車体が関係しているが、デザイン面では日産本社デザイン部門の意向が強いときく。対するトヨタは、グループ内の専門家にデザインのかなりの部分を任せ、トヨタのスローガンである「適時・適地・適車」を実践している。

2代目はさらに兄弟車ヴェルファイアを加えて、30歳前後のシェア拡大を狙う。まさに敵ナシ状態である。

■北米市場じゃ、ハンパもの?

そんなアルファードが、なぜか北米では売られていない。なぜなのか?

理由は簡単。こんな“妙なミニバン”、アメリカ人は買わないからだ。
日本では皆、アメリカをミニバン大国だと思っているフシがある。大手新聞などでも、「ミニバンはサッカーママ御用達」と報じることがよくある。が、アメリカでいうミニバンに、アルファードのようなゴージャスさはない。そもそもアメリカ人は日本人がアルファードを所有して感じるようなステイタスを、ミニバンには感じないのだ。

私は、アメリカ各地でことあるごとに、知り合いのアメリカ人男性たちにミニバンをどう思うか聞いてみる。彼らの答えはいつも同じで、「自分じゃ買う気にならない」。ミニバンには、家族のための使い勝手や、商用目的の利便性しか期待していないわけだ。

こうした観点で見ると、アルファードはアメリカではサイズ的に小さ過ぎる。ご存知だろうか、アメリカ専用ミニバン「トヨタ・シエナ」は、アルファードに比べて255mm長く、130mm幅広く、140mmも背が高い。ホイールベースだって80mm長い。さらにシエナは、3列シート後部の荷室スペースが大きい。対するアルファードは、3列シートを最後部までスライドさせるとリアハッチ開口部とほぼ接触し、荷室スペースは消滅する。

つまるところ、アルファードが用いている「大型ミニバン」の「大型」とは、日本の生活事情に限ったことなのだ。だだっ広いアメリカでは中途半端なサイズ感になる。

ホンダも一時、カナダ生産のアメリカ向けミニバン、北米版オデッセイを「ラグレイト」として日本でも発売した。しかし、日米ミニバンの差を強く感じたホンダは、日本専用大型ミニバン「エリシオン」の開発を余儀なくされた。

■ある意味、ニッポン文化

トヨタ関係者からは、こんな話も聞いた。「先日、ヨーロッパのディーラー関係者がウチの工場見学に来ました。ラインを流れているアルファードを見て『面白いクルマだ。ヨーロッパでも売れるぞ!』と真剣に言っていました」。
狭い国土や生活習慣など、アメリカよりは日本寄りのヨーロッパ。こうした声が出るのは当然なのかもしれない。

「アルファードをアメリカに!」という熱狂的日本車ファンも、いないわけではない。が、上記のような現実をみれば、アルファードは、日本の漫画やアニメに似たような「他に類をみない日本特有の最新文化」と感じられるはずだ。
アルファードの本当のライバルはエリシオンではなく、『エヴァンゲリオン』なのかもしれない。
後編につづく

(文と写真=桃田健史(IPN))


日本で人気の最新ミニバン、北米ではナゼ売れない?【前編】の画像
2008年5月12日、発表会場に並べられた「ヴェルファイア」(写真手前)と「アルファード」。
2008年5月12日、発表会場に並べられた「ヴェルファイア」(写真手前)と「アルファード」。
日本では十二分に大きなアルファードだが……
日本では十二分に大きなアルファードだが……
写真手前が「トヨタ・シエナ」。北米仕様の大型ミニバンである。
写真手前が「トヨタ・シエナ」。北米仕様の大型ミニバンである。
7人乗りアルファードの2列目は、豪華なキャプテンシート。走る御殿という言葉がピッタリだ。
7人乗りアルファードの2列目は、豪華なキャプテンシート。走る御殿という言葉がピッタリだ。

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